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2020/12/27

存在ケアの時代

こんにちは。
リベラルコンサルティング協議会の矢萩です。

今回は、シンポジウムでもお話しさせて戴いた、
「存在のケア」の重要性について書いてみたいと思います。

この視点はコンサルタントにとってはもちろん、
対人の仕事すべてにおいて重要な視点だと思います。

いわゆる「クレーム」には、3つの類型があります。

(1)having「所有」に関する問題
  (商品の不備・不具合・故障など)

(2)doing「行動」に関する問題
  (態度や言動が不適切、無配慮なシステムなど)

(3)being「存在」に関する問題
  (リアクションが無い・遅いなど)

これらの対応として「所有」に関する問題の場合、
ものを扱う業態であれば修理や交換、
サービスであれば振替など対処・対応が必要になります。

「行動」に関する問題は、お詫びをした上で今後の対応を説明し、
場合によっては結果を報告をします。

これら2つについては、長い間クレームの中心でした。

しかし近年「存在」に関する問題のタイプのクレームが激増しています。

「存在」に関する問題は、
前述の「所有」や「行動」に関するものの他、
商品の問合せや注文等に対してのリアクションが遅いなどもあり、
クレームがあった場合は怒りが増幅し、
元々は購入に前向きだった顧客候補を購入前に怒らせてしまうということにもなります。

ICTの発達により、「待つ」ということ自体のストレスがもの凄く変容してきています。

YouTubeなどの動画編集を見れば一目瞭然ですが、
人気動画の多くはかなりせかせかと展開します。

早口で喋ったり、余分な「間」をできるだけ排除して、
簡単で分かりやすくしているわけです。

字幕はスピードをフォローするために使われています。
10分を超える動画は、なかなか視聴されないという傾向もあります。

また、LINEなどの「既読スルー」なども、これらの価値観をよく表しています。

スピーディーに感情を表すためにスタンプを使う。
自分の時間は大事だという価値観ですが、
相手には素早いリアクションを求めます。

「相手の時間は大事ではないのか、自分勝手な!」
と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、そう言うわけではなく、
この人はこれくらいまでに返事しないと不安になる人だな、
などとタイミングを計ることがコミュニケーションの前提に、
含まれてきているということなのです。

友達などの場合なら、
その価値観が合わなければつき合うのをやめれば良いのですが、
顧客(候補)となると話は別です。

逆に言えば、「存在」に関することさえしっかりとケアできていれば、
「所有」や「行動」に関しては肝要な人が増えているのも、
新しい世代の特徴でもあります。

商品に不備があるのは仕方ないし、そういうこともあるだろう。

色々な態度・言動も個性だし、そういう人もいるだろう、という感覚です。

ただ、自分という存在を蔑ろにされたと思うと、ガマンができないわけです。

近い感覚の人や、近い世代とだけ仕事をするスタイルならば良いですが、
ほとんどの場合それは難しいと思います。

上下15歳までが、ほぼ同じ感覚でつき合うことができる幅だと言われますが、
ICTはそういう世代間をも簡単に越境してきます。

どの感覚が正しいかという話ではありません。
真に多様性の社会へシフトが始まっているということです。

その辺りをメタ認知しておくと、
それぞれの「存在」に対して受容したりリスペクトしたりしやすくなります。

これからの時代は特に、コンサルタントをはじめ、
あらゆる仕事は、顧客だけでなく社会全体を良くする。
という方向性を持っている必要があります。

そして社会は、
多様性の中での個という存在について考えるフェーズに差し掛かっています。

そういうビジョンに、自分自身が、クライアントが、
しっかりと接続できているかを確認することが、
コンサルティングに欠かせない機能になってきているのです。